国土と財源の使い方

これは2008年1月に書かれた文書です。


  現在、日本は少子高齢化であり格差社会である。この二つを同時に解決し、かつこれからの日本の方向性を示すひとつの方法を述べる。ずばり日本の交通を一新するために土地所有権の改正、高速道路の無料化を図ることだ。順を追って説明しよう。
  まず少子高齢化の原因を探る。やはり今の世の中夫だけの給料では子供を二人以上育てることができない家庭が多いため、妻も働かざるを得ない。そして出産をする場合には会社を休むことになる。産休の間給料をくれるのならともかく、そういった会社は全体的にとても少ないため、産休の間はなかなか家計が辛い家が多いだろう。子供を産んで、会社も協力的で社内に育児所があったとする。だがこの場合もっとも困るのが電車通勤だ。車社会ならば良いが、朝の満員電車に赤ん坊を連れることは困難である。結局そのことを考えると、子供を産むことは会社をやめることになってしまう。都会での子育て難は単に会社がよりよい福祉を整えるだけでは解決できない。
  次に格差。先ほど言った「男だけの給料では子供を育てられない」と関係するひとつのデータとして、平成18年に年収200万円以下の人が1000万人を突破し、年収1000万円以上の人が増加、というものがある。これが格差である。私はこの格差の原因のひとつは地域間格差だと思っている。つまり地方にいけばいくほど職が無く、産業が減退しているせいで、年収の格差も広がっているのだ。これは日本が中央集権的であるからだと私は思っている。つまり都会に企業が集まりすぎているため、若者が地方から離れていってしまう根本の構造が悪い。ではなぜ企業は土地代の高い都会に集まろうとするのか。今の時代、情報のやり取りはインターネットでも可能なのに、である。それはモノのやり取りが地方は圧倒的に難しいからだ。道路は狭く、高速道路は値段が高い。そんな国でどうやって輸送がまともに行えるか。そして輸送ができないならば残された手段は同じところに集まるしかないのだ。
  高速道路という言葉が出てきたので先に「高速道路の無料化」について言及する。まずその必要性だが、ひとつ例を挙げるならば木更津。ここは一坪9万円程度で、銀座のティファニーと比べたら2000分の1の値段だ。なぜなら木更津は田舎と考えられているからである。実際未利用の造成地が広がっている。しかし実はこの木更津、高速道路とアクアラインを使えば羽田から20分で行けるのだ。片道4000円(ETC車は2320円)もするけど。もしこれが無料化できれば地方の活性化に確実に繋がるのである。もちろんなんらかの登録をしないと無料にならないといった暴走族への対処や、期間や地域によって値段を変えることは必要だ。だが、企業の地方分散をもっともわかりやすく行えるひとつの手段であることに違いない。
  財源。高速道路を無料化して、金はどうするんだという疑問が湧くが、日本の道路財源は余っているはずだ。いや、余っていないとおかしい。消費税を含めると自動車ユーザーから年間9兆円もの金を取りこれを一般道路作りに利用している。このうち、揮発油税軽油引取税自動車重量税自動車取得税地方道路税については法律で決めた本来の税率のほぼ倍の税金(暫定税率の上乗せ分)を取っている。その上乗せ分だけで2兆5000億円余りに達する。福田首相はこの上乗せ分を自動車ユーザーに還元すると言いましたので、このうち2兆円を高速道路の無料化に使えばいい。旧道路4公団の借金43兆円は毎年その2兆円ずつ返していけば金利含めても30年で返済可能だ。
  ここまではいいのだが、根本的な部分において、日本は道路の設備が整っているのだろうかという疑問点が挙がる。整っていなければ高速道路を無料化したとしても渋滞を引き起こし、それは環境問題にも繋がるだろう。私は道路の設備は整っていないと思っている。この図を見て欲しい。

日本の道路が完成したなんてとても言えたものではない。
  なぜこんな風になっているかというと明治時代にさかのぼる。1869年、版籍奉還(諸大名から天皇への領地(版図)と領民(戸籍)の返還)が行われ、次に1871年廃藩置県。それと田畑勝手作(田畑に何を作っても自由)が行われる。1872年には田畑永代売買禁止令が解除され、そして1873年、地租改正によって土地に対する私的所有権が確立した。反対するものは廃藩置県によって失われていたため、簡単に決まってしまった。この一連の流れによって公共の福祉を優先されるべきである土地が、個人の利益に左右される形となった。あくまで聞いた話だが、道路を地下に作り、排気ガスを浄化して煙突から外に出すようにしようという計画が挙がった際、煙突付近の住民は「浄化」という部分を信用せず、土地の所有者であるという強みを使って計画を潰したという。
  日本は山が多く、高低差の激しい国だ。

  このような国での工事費はバカにならず、年間9兆円もの金を徴収してもまだまだ道路は作られない。東京圏の環状道路はいまだ22%しか整備されていないし、そもそも土地に関する施策の計画・実施を円滑に進めるために必要な地籍が1951年に開始して、まだ終わっていない。それも先ほど言ったように日本では土地所有者がいるため彼らに莫大な金額を払い、土地を買い取らなければ一本道を作れないのだ。それに対応するよう考えられた地下に道路を作ろうという計画すらままならず、今の土地の私的所有が変わらない限り日本は輸送の出来ない中央集権国家として海外に遅れをとってしまう。シンガポールのように港が世界的に優れているならともかく、2003年の東京の港湾での取扱量は3314TEUで世界17位だ。輸送ができる国がこれからはリードしていくと私は考えているし、そういった意味で日本はこれからどんどん難しくなっていくだろう。
  最初に戻るが少子高齢化を解決するには地方分散と格差の縮小が望まれ、それを行うには高速道路の無料化が必要であり、だが高速道路の無料化だけでなく高速道路の設備をより整えなければならず、それには土地の私的所有を無くす方向へ向かわなければならない。
  日本はもはや経済一流ではないと大田大臣が言い、それによって不安になった人も大勢いるでしょうが、何よりも重要なのはこれからどうして行くかだろう。借金をどうやって返していくかも重要だし、日本の地方には多くの技術が埋没しており、それを発掘していくことも重要だ。特許を理解していない理系を教育したり、学力低下(私はそうは思っていないが)も歯止めを利かせなければいけない。対外的な日本の役割を理解し行動することも大事で、残業代を払わない企業に制裁も加えないといけない。やることが多すぎて何がなんだかわからなくなりますが、私はまず日本国内の流通経路の確保と改善を優先すべきだと思う。
  ちなみにこれを行うのに必要なのは情報の管理とリーダーの存在で、まあそういった点でFLPの講義内容を活かしていきたいとちょっとだけ思っている(ぼそり)。




参考文献
http://www.youtube.com/watch?v=0DUkYLzFCrg
http://business.nikkeibp.co.jp/bns/author.jsp?ID=144820&OFFSET=0
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
「国土学事始め」大石久和
など