浅草探

最近何を書こうとしても当たり前のことだと思って書くのをためらってしまう。例えば朝は気持ちが良いということや、鳥の声が聞こえるなどということを書こうとしても、別にそれを芸術にまで昇華させようという気がないため、なにやら味気ない文章になってしまう。だから書かない。
変わったことがあったかといわれても、別に・・・。いや、あるにはある。こんな出だしだと書くのもおかしいものだけど、とりあえず書こうか。
そう、先日浅草に古い友人と出かけたのだった。船でこちらまで来ていたから、その自由時間を少々いただいて、街へ繰り出した。僕は浅草に行ったことが無かった。関東周辺に来てはや7年近く経つのか。7年一度も浅草に訪れていなかった。
雨だった。いや途中で止んだ。止んでるときに子供の歌舞伎を見た。お年寄りが多かったからベンチを退いたら若いカップルが座った。歌舞伎だが、まあ、あまり上手くは無かった。けど面白かった。不意に昔の彼女が歌舞伎好きだといっていたが、一緒に歌舞伎を見なかったな、ということを思い出した。
そのあとで花やしきに入った。お化け屋敷は通路が狭かったため私が後ろを歩いたのだけど、ぷしゅうという風が友人にだけ当たって、私が通ったときは出なかったり、なんだか残念だった。人形も陳腐だった。だがふいに伊藤淳二の漫画を思い出して怖くなった。こんなにしょぼいお化け屋敷で怖がるのは子供か私ぐらいのものだろう。ジェットコースターでは後ろの女子高生が「なにこれしょぼい」と出足で言っていたが、早くなると途端にキャーキャー喜声を挙げるから参った。いや、これは楽しかった。次に来るとすれば家族を連れて、だろう。家族を連れればアトラクションには乗らないから、きっと花やしきでジェットコースターに乗るのはこれが最後なんじゃないかな。
浅草の町並みは古かったが、ちょっと見渡せばデパートが見えたり、花やしきから意味ありげなホテルが見えたり、なんだかこれもある種日本を象徴する風景なのかと思った。江戸時代的というより、ごった返しな昭和的。僕はそんな風に感じた。
友人とは、実は7年ぶりの再会である。7年会わず、ほぼ連絡も取ってなかったのに友人でいられる関係というのは、本当に貴重なものである。これもまた当たり前のことだろうと思う。