三匹の子豚は不動産屋の広告戦略

藁の家に住む豚と木の家に住む豚が家を吹き飛ばされたがレンガの家だと大丈夫、なんて明らかにレンガの家を売りたい不動産屋の広告戦略である。
今は時間がないため裏を取れないが、きっと18世紀後半のイギリスではまだまだ木の家に住む人々が多かったのだろう。レンガの家なんて高いし、寒そうだからいいやって、まさに吹き飛ばされた豚のごとく考えていたのだ。
なんとかしてそういった社会の風潮を変えたいと考えた不動産屋は子供向けの物語でもってアプローチをしかけた。
読んだ子供は「レンガの家が安全」と知らず知らずのうちに刷り込まれるし、読んであげる母親は「絵本は正しいことを書いているに違いない」と思い込んでいるため、その内容を信じてしまう。
父親が家に帰ってきてベッドの中で一戦終えたあと妻は「ねぇえ、レンガのおうちに住みましょうよう」とねだる。旦那は「とんでもない、この家のローンだってまだ30年以上あるんだからレンガの家に移りかえるなんてできやしない」という。体をくねらせながら甘い声で妻がレンガの家にしよおよとねだる。「ベンももうすぐ4歳、お留守番をさせなきゃいけなくなることもあるわ。そんなときに木の家だと心配で心配であたし変になっちゃいそうよ。もちろんあなたに毎晩変にさせられてるけどねウフフ」。こんなやり取りが幾晩か続いて、そこまで言うなら仕方がないと父親は今の家をレンガの家に改装するハメになるのである。
絵本を使った広告戦略というのはまっこと策士である。


考えてみれば今の日本でも絵本による広告戦略は行われており、Google先生で「絵本 エコ」と検索すればどれだけ多くの絵本が環境問題を取り上げているかわかる。
これはどう考えてもプリウスにかけるトヨタや、ソーラーパネルを売りたいシャープなどの戦略に違いない。
私はこれを悪いとは思っていないが、絵本を利用するとはなるほど考えたものだと関心せざるを得ない。うははははと笑う福音館の声が近く遠く響きわたる。